菅野(2008)は生涯発達・地域支援の4領域を挙げており、「学習・余暇支援領域」「自立生活支援領域」「作業・就労支援領域」に並び、本稿が担う「コミュニケーション支援領域」が位置づけられている。コミュニケーション支援領域は、「行動障害の軽減も含め、他者との円滑な社会生活を送るために必要なコミュニケーションに関する領域で、具体的にはやりとりや要求に始まり、報告・連絡・相談、そして、経験や知識を生かして相手の気持ちをつかむまでの支援する領域である」と定義されており、コミュニケーション支援領域は他の領域とは異なり、生涯を通じて行われる必要のある領域であることも重ねて述べられている。
 生涯発達・地域生活支援の4領域はAAMRの10領域とICFの9領域を、①重複したスキルが含まれるものと、②互いに共通する機能の延長線上にあり、類似性が高いと考えられるものは、できるだけ1つの領域とみなすという考えのもとに創出されており、コミュニケ―ション支援領域に関してはAAMRのコミュニケーション、社会的スキルおよびICFのコミュニケーション、対人関係を統合した領域となっている。
 人が生涯に渡り生活を営む際、他者からの支援は障害児者に関わらず必要となる。それゆえ、他者と円滑に関わる力は各年代を通して育成・維持される必要があるが、環境の変化や加齢に伴い、獲得・維持されてきた能力が発揮されず、適応上の問題として表面化する場合があるだろう。
 生涯発達支援に関する機運が高まりをみせるが、知的障害者に対する青年・成人期以降の支援課題については未だ明らかとなっていない現状がある。そこで、次項では全国の相談支援機関を対象とした調査結果から得られたコミュニケーション支援領域に関する相談を分析し、課題の整理と課題に基づく支援内容の提案を行うこととしたい。

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