これまでの研究成果より、コミュニケーション領域に関する相談ならびに各年齢層における具体的な相談内容とその推移が明らかとなってきた。それらの結果を踏まえ、各領域の課題に応じた支援内容一覧を試作することが本研究の目的である。
支援内容は「本人への支援」と「環境調整」を軸とした支援の2軸とし、それぞれ具体的な支援内容を検討し、示すこととした。Fig.7に示す。
Fig.7に示すように本人への支援においては「困難さへの対処的支援」と「本人の知識・スキルの獲得および維持」の2観点から整理した。環境調整に関しては環境調整ならびに支援者への支援という1つのまとまりで提示することとした。
まず、「本人への支援(困難さへの対処的支援)」であるが、10代から20代後半にかけては行動上の問題の割合が
Fig.7 コミュニケーション支援領域における支援内容一覧(試案)
高いことから対処的な支援が求められる。また、精神疾患等の疾病に起因するトラブルを未然に防ぐための疾病の治療も必要となるであろう。また、30代からは能力低下等の加齢に伴う課題による対人トラブルへの対応も必要である。
続いて「本人への支援(本人の知識・スキル獲得、知識・スキル等の維持)」であるが、他者への関わり方や自身の特性を学び、それに基づいた適切な関わり方を継続的に支援する必要性が示される。知的障害児者本人からの相談の中には、自身の特性を理解し、課題解決の方策を探りたいという旨の相談の割合が一定数あり3)、本人支援の重要性がうかがえる。さらに、知的障害者の特徴である般化や応力の困難さが起因していることが考えられ、特性に応じて状況ごとに丁寧に支援を行う必要があるだろう。また、30代後半からは加齢に合わせたコミュニケーション手段の代替も獲得するよう支援する必要がある。
最後に「環境の調整、支援者への支援、制度の利用」であるが、どの支援も継続的に行う必要がある。周囲が障害や本人の特性を理解する支援も必要であり、それによって環境の変化に起因する対人トラブルを最小限にしていくことが必要である。また、他者と関わる機会そのものの設定を継続的に行う必要があることは言うまでもないだろう。